2016年11月3日木曜日

古典の日


 毎年、十一月一日は、古典の日という特別な日に指定されている。
 そのため、各地でその記念行事が催されているのだが、去年と一昨年は、東京で国文学研究資料館主催の講演会があって、私は二年連続でその記念講演をした。いずれも源氏物語についての講演で、やはり古典といえば源氏、というわけである。
 今年は、古典の日推進委員会の主催で、京都での催しがあり、これは講演だけではなくて、対談やら音楽やら、いろいろ盛りだくさんな行事であった。
 その一番最後に、基調講演というのを頼まれて、『源氏物語、そのさまざまな面白さ』という講演をしに京都まで行ってきた。例によって、車を運転して、往復十四時間。まことに普通はそういうことは思いつかないかもしれないが、鉄道嫌いの車好きの私としては、新幹線で行くよりもずっと疲れないから不思議だ。
 そのイベントに、中村勘九郎さんも出演、たまたま楽屋が隣同士だったので、この際、ミーハーよろしく、記念写真をとらせていただいた。思っていたよりもずっと背が高く、体格の立派な人だなあという印象。気さくで腰が低く、とても感じがよかった。
 もっとも、そのイベントは、あれこれ欲張りすぎて、時間が足りなくなり、どんどん押してきた結果、最後の基調講演のところを短くせよと無理難題、最初は五十五分という依頼だったのが、五十分になり、ついには四十分でやれ、というので、源氏五十四帖の浩瀚な世界を、せいぜいコンパクトにお話したところである。が、せめて一時間は頂かないと、時間が短か過ぎるなあと、遺憾な思いであった。
 講演を終えて、そのまますぐに帰京の途につき、名神ー中央高速と、通い慣れた道を通って、坦々と走り、深夜十二時ちょうどに自宅に帰り着いた。