2013年5月28日火曜日

ターナーの画業

きのうは、イギリス大使館の大使公邸で小さな講演をしてきた。
この秋に、東京都美術館など各地を巡回する大ターナー回顧展が開催されるについて、主催者の朝日新聞社が、後援のイギリス大使館を会場として、大使御臨席のもと、記者発表のプレゼンテーションを開いた。
私は、どういうわけか、その基調講演のようなものを頼まれて、三十分ほどの短い講演をしてきたのである。
私はターナーとコンスタブルとが全くの同時代人であるところから説き起こして、しかし、その生涯や画業は正反対であったと言ってもよいということを論じ、ターナーの画業がいかに単なる写実から飛躍して、虚構や想像や創造に満ちた営為であったかを論じた。
だからこそ、ターナーは当時の画壇やパトロンたちに人気を博し、生涯に14万ポンドとも言われる巨富を蓄積できたのであったが、これと対照的に愚直なまでに田園風景の写実をしつづけたコンスタブルは、まったく人気なく、ついに妻の持参金まで食いつぶして赤貧失望のうちに世を去ったのだ。
そういうことを、彼の代表作を何枚か映示しつつ、子細にその絵を点検などしつつ話しをすすめたのであった。
写真は、その英国大使公邸の会場。右手に背中を向けている白髪白皙の紳士が現駐日大使ヒッチンズ氏である。ヒッチンズ大使も見事な日本語で、面白いスピーチをされた。彼はほんとうに温容、気品と教養に満ちた素敵な紳士である。