2011年5月29日日曜日

京都北山志明院

 JR東海の車内誌「ひととき」の特集取材で京都へ行ってきた。
 今回のテーマは、「涼を感じる」というようなことで、あの暑い京都の人たちがどういうふうにして暑さと対峙し、それを克服する智恵を集積してきたか、ということを学びに行ったのである。
 今回の取材でもっとも感銘を深くしたのは、鴨川の源頭北山雲が畑の志明院を訪ねた事である。志明院は、こんなに山深いところが京都のすぐ外にあったのかと、ちょっと驚かされるほど深山幽谷の趣豊かなところにひっそりと佇み、あたりは、満山森林の気と、清流から発せられる幽邃の気に充ち満ちている。
 息を吸えば胸中の鬱を散じ、心の洗われるような爽快感を覚える。なんともいえぬ去俗の愉快を感じた。写真は志明院のご住職田中真澄さんご夫妻。このご夫妻がまた、あたりの静謐清爽な感じそのものの、愉快で飾らぬ、そしてまったく俗っ気のないお人柄で、初めてお目にかかったのだが、たちまちに十年の知己のような親しみを覚えた。またぜひ再訪したいと思う。

2011年5月21日土曜日

世紀末の愛を歌う

 きのう、19日の夜、サントリー小ホールで開催された、二期会の連続演奏会のうちの『世紀末の愛を歌う』というコンサートに、コンサートトークのお役で出演してきた。このコンサートの企画は芸大名誉教授嶺貞子さんで、ご自身はトスティのナンバーを情緒纏綿と歌われた。
 写真は、終演後に楽屋で撮影した出演者全員の集合写真。
 私は「世紀末とはどういう時代であったか」ということを、音楽に限らず、美術工芸や建築や文学などにわたる、汎ヨーロッパ的芸術運動と社会的背景ということでお話しした。わずか十五分の短いトークで意を尽さぬところがあったのが残念だけれど、もとより私のトークは刺身のツマというものゆえ、聴衆の皆さんには、どうでもよかったかもしれない。呵呵。写真左から、テノール松原友さん、アルト伊原直子さん、私、ソプラノ嶺貞子さん、メゾソプラノ森永朝子さん、バリトン宮本益光さん、ピアノ山岸茂人さん。

2011年5月3日火曜日

音楽仲間

 昨日は良い一日だった。ずっといっしょに音楽をやってきた仲間が集まってくれて、久しぶりに思う存分に歌を歌った。独唱、重唱、とくにまた勝又晃君とのデュエット「デュオ・アミーチ」での二重唱、いつの間にか歌いっぱなしで二時間もたっていた。ここ一ヶ月余り、花粉の影響やら大地震・原発の憂鬱やらで、ずっと気管支の調子が悪く、日々慢性気管支炎の状態が続いて、声もかすれてしまって出ないし、意気消沈して過していたのだが、昨日思いきって音楽三昧に過したところ、その終わった直後にはさすがに声帯が疲れて掠れ気味であったにもかかわらず、今朝になってみたら、気管支の不調は嘘のように消えうせ、楽々と声が出るようになって、私は一ヶ月ぶりに愁眉を開いた。音楽というのは、いかなる薬よりも、しばしばこうして著効をしめすのである。そういう経験はこれが三度目だが、今回のはほんとうに嬉しい、劇的な変化であった。写真は、私のオフィスで撮影したものだが、前列右がピアニストの五味こずえ君、左がソプラノの岡村由美子さん(勝又夫人)、後列右は私の舎弟分で海陽学園教諭の川本真雄君、左が我が師であり相棒であり良き友でもあるテノールの勝又晃君。

2011年5月1日日曜日

デスクライター

 いまでこそ、カラーのインクジェットプリンタが全盛で、安くて素晴らしい機能のがいくらでもあるが、これがほんの十五年くらい前は全然情勢が違っていた。まだキイキイとうるさいドットインパクトプリンタなんてのが主流で、インクジェットは出てはいたけれど、スピードは遅く、クオリティは低く、あまり感心したものではなかった。そこで熱転写プリンタなんてのが巾を利かせてもいたのであった。そういうなかで、ヒューレット・パッカードが発売した、デスクライターというプリンタは、むろんまだモノクロながら、当時の常識を覆すような素晴らしい印字性能を持つインクジェットプリンタの先駆的存在で、発売たちまちに、私どもマックユーザーにとっての定番プリンタの地位を獲得したのであった。この写真がそれで、デスクライター680Cという機種、1996年製。実は私は今までに使用したコンピュータ機材をずっと捨てずに保存している。自ら称してコンピュータ博物館。そのなかにこのマシンもずっと保管していたのだが、さすがにもう置く場所に窮するような事態になって、断腸の思いで、プリンタ類は処分することにした。非常にユニークな技術を駆使した名プリンタを捨ててしまうのは、まことに忍びないが、やむを得ない。さらば、わが愛しのデスクライター!