2010年12月28日火曜日

一輪のバラ

 家の玄関前に置いてある小さな植木鉢に、一本のバラと、洋蔦と、オリーブの木がいつのまにか混植になって共生している。これらを植えた記憶はまるでないので、どうしてこういうふうになっているのかわからない。が、事実そういう珍しい、また大して見どころのないような一鉢が、もうここ十年以上、枯れもせず元気に生き続けているのは、まことにめでたい風景である。
 なかんずく、このバラは、毎年今ごろになると、この位置に、ただこの一輪だけの可憐な花を咲かせる。そうしてずいぶん長いこと咲き続けるから感心だ。薄い黄色に花弁の先だけが紅をつけたようになっていて、その可愛らしさはなんともいえぬ。最近は、生ゴミを乾燥させる機械でからからに乾燥させてから、これらの植木鉢にも栄養としておすそ分けするのだが、そんなのを食べてかろうじて花をつけるのであろうか。栄養があまりよくないから、アブラムシなども付かないのは、思わぬ余得というべきかもしれぬ。ともあれ、華々しい園芸品種の大輪のバラなんかより、この「野のバラ」ともいうべき風情の一輪の好ましさ。私はなんでも、こういうささやかなものを好む心の癖があるのである。