2008年12月20日土曜日

お茶漬け鰻

今日はまた、京都縄手三条南「かね庄」のお茶漬け鰻を送ってくだ
さった方があって、まことに嬉しいのであった。この鰻は、おそら
く天下一品の美味といっても間違いないと思うくらいの、なんとも
いえない美味しいものであるが、ただそれが美味しいというだけで
なくて、私にとっては、懐かしい師匠の想い出に繋がるというとこ
ろも嬉しいのである。昔、私がまた慶應の大学院生だったころの話
だ。先師森武之助先生は、人も知る食通酒通であった。で、私が京
都へ出張調査に出かけるに際して、「三条京阪の駅からちょっと南
に下がったところにな、『かね庄』という店がある。なーに、行け
ばすぐ分かる。ここの店の『お茶漬け鰻』を買ってきてくれない
か」とそういって、先生は私に五千円を手渡された。その金額まで
はっきり憶えているのだが、思えばあれはもう三十年もの昔にな
る。私は言い付かったとおり、その店の「お茶漬け鰻」を先生の分
五千円、そして自分用にも同じように買って帰った。食べてみる
と、この濃厚な色にもかかわらず、味は決して濃すぎないのは、
まったく不思議なくらいで、その風味は舌の上の幸福というべき味
であった。以来、京都にいくと必ずこれを買い求めてくることにし
ている。ここ三十年来、ほとんど値段が変らないのは、不思議なく
らいである。値段だけでなく、味も寸毫だに変らず、今も昔も並び
無く旨い。そうして店の構えも、包装紙の意匠も、なにもかも、
まったく変らない。変らないのは、これ以上変えようがないという
ことでもあろうか。きょうはその懐かしくも美味しいお茶漬け鰻
で、さっそくお茶漬けを作って舌鼓を打った。ああ、美味しかっ
た。またこれを下さったTさん、ありがとうございました。