2008年7月20日日曜日

薩摩スチューデント

 昨年単行本として刊行した、長編歴史小説『薩摩スチューデン
ト、西へ』が、幸いに今年の夏休みの推薦図書に選ばれた。うれし
いことである。
 この小説は、光文社の小説宝石という雑誌に足掛け三年間連載し
たあと、同社から単行本になった。
 慶應元年、薩摩藩は極秘裏に15人の優秀な留学生と、四人の秘密外
交使節団を同行させてイギリスに送り込んだ。もし露見すれば外国
渡航などは死罪という時代である。そのなかで、若き薩摩隼人たち
が、次第に西洋文明に目覚め、やがてイギリス、アメリカで大切な
ことを学んで帰ってくる。明治政府の文教・外交政策の多くの部分
が、この薩摩スチューデントと呼ばれた若者たちに負うていること
は案外と知られていないが、厳然たる事実である。その細かな史実
を、前後六年の歳月をかけて調査し、イギリスで膨大な資料を蒐集
して書き上げた、史実に基づく歴史小説で、この夏休みの機会に、
ぜひとも若い人たちに読んでもらいたい。ああ、昔の青年たちは偉
かったなあ、日本人は素晴らしい民族だなあ、と元気が出てくるこ
とと思うのである。